帰化と永住の違い
ビザ(在留資格)申請サポート
外国人が日本で長期的に安定した生活を送るための選択肢として、「帰化」と「永住」の2つの制度があります。
どちらも就労制限がなくなり安定した生活が可能になりますが、国籍という根本的な違いがあり、選択には慎重な判断が必要です。
本記事では、2025年最新の法律改正情報を含めて、帰化と永住の違いを初心者にもわかりやすく詳しく解説します。
帰化と永住の基本的な違い
帰化と永住の一番の違いは、国籍が日本になるか、それとも外国籍のままかということです。
どちらも就労活動に制限はなく、日本で安定した生活を送れることに変わりはありませんが、国籍が変わるという点においてはまったく異なる申請であるといえます。
国籍が変更となる帰化については、母国の国籍を放棄しなければならないので、渡航する際にビザの取得が必要となる場合があります。
ただ、日本のパスポートを取得できますので、多くの国でビザの取得が免除されています。
また、帰化は子供や家族にも様々な影響を与える可能性があります。便利だからと安易に決めず、慎重に選択することが必要です。
帰化とは
帰化とは、外国人が日本の国籍を取得し、日本人になることです。
日本では、一つの国籍しか認められていませんので、帰化をするとそれまでの国籍を放棄することになります。
帰化することで日本人としての権利(選挙権、被選挙権など)を得ることができ、就労についても当然、制限はなく、どんな仕事にも就くことができます。
永住よりも審査は厳しく、申請から結果がわかるまで1年ほどかかることも珍しくありません。
在留カードを持つ必要はなくなり、在留期間の更新の手続きもなくなります。日本のパスポートを発給申請することができるようになります。
帰化申請の窓口となるのは「法務局」です。
(ご参考:『帰化の要件』 |『帰化申請に必要な書類』)
下記で詳しく帰化のメリット・デメリットをご紹介いたします。
帰化のメリット
帰化の最大のメリットは、完全な法的安定性を得られる点です。
日本国籍を取得することで、退去強制の対象となる心配がなくなり、安心して日本で生活できます。
また、政治参加権を得られるため、選挙権や被選挙権を行使できるようになり、日本の政治に直接関わることが可能になります。
海外渡航に関しては、海外渡航の自由が大きく広がります。
日本のパスポートは国際的な信頼が高く、多くの国にビザなしで渡航できるため、旅行やビジネスでの移動が格段に便利になります。
さらに、手続きの簡素化もメリットの一つです。在留期間更新手続きが不要になるため、行政手続きの手間が省けます。
職業選択の面では、公務員就職の道が開けます。
これまで制限があった職業、特に国家公務員や地方公務員などへの就職が可能となり、キャリアの選択肢が広がります。
帰化のデメリット
一方で、帰化にはいくつかのデメリットも伴います。
最も大きなデメリットは、原則として母国国籍の喪失です。
ほとんどの場合、元の国籍を放棄する必要があるため、母国との法的・精神的なつながりが断たれることになります。
母国への渡航に関しても、ビザが必要になる可能性が出てきます。
母国の国籍を失うことで、これまでビザなしで渡航できていた母国へも、外国人としてビザの取得が必要になる場合があります。
また、家族への影響も考慮すべき点です。
配偶者や子どもの国籍にも影響が及ぶ可能性があり、家族全体で慎重に検討する必要があります。
そして、一度帰化してしまうと取り消し不可である点も重要です。
一度日本国籍を取得すると、原則として元の国籍に戻すことはできないため、将来的な選択肢を限定することになります。
帰化の要件
法務省が定める帰化の一般的要件は以下の通りです。
1. 居住要件
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること
- 住所は適法なものである必要があります
2. 能力要件
- 18歳以上で、本国法によって行為能力を有すること
3. 素行要件
- 素行が善良であること
- 前科や重大な交通違反がないこと
- 税金や年金の支払い状況も審査対象
4. 生計要件
- 自己または生計を一にする配偶者その他親族の資産・技能によって生計を営むことができること
- 年収300万円以上が一般的な目安
5. 重国籍防止要件
- 国籍を有さないか、日本の国籍取得により元の国籍を失うこと
6. 憲法遵守要件
- 日本国憲法およびその下に成立した政府を暴力で破壊することを企てるような思想を有していないこと
7. 日本語能力要件(実務上の要件)
- 小学校3年生程度の日本語能力
- 読み書き、日常会話ができること
永住とは
永住権とは、日本で住み続ける権利です。正式には「永住者」という在留資格を取得することを指します。
永住者になることで、在留資格で縛られていた条件が取り払われますので、いろいろな仕事に就くことができるようになります。
帰化よりも審査は厳しくありませんが、それでも申請から結果が公表されるまで半年前後かかることがあります。在留カードは引き続き携帯する必要があり、日本のパスポートを手に入れることはできません。
永住で注意すべき点は、永住ビザを取得しても1年を超えて日本を離れた場合は、永住権が取消しとなってしまいます。また、犯罪を犯した場合などでも永住権が取消しとなる場合があります。
永住申請の窓口となるのは「入国管理局」です。
(ご参考:『在留資格「永住者」について』 |『ビザ申請の必要書類【永住許可申請】』)
下記では永住のメリット・デメリットを詳しく解説いたします。
永住のメリット
永住権の大きなメリットの一つは、母国国籍の維持ができる点です。
これにより、元の国籍を保持したまま日本に永住できるため、母国との文化的・法的なつながりを維持できます。
また、就労の自由が大幅に広がり、原則として職業選択に制限がなくなります。
これにより、多様な職種に就くことが可能になり、キャリアの選択肢が広がります。
さらに、相対的な安定性も魅力です。
帰化と比較して永住権の取得要件は緩やかであり、永住許可を得ることで、在留期間の更新手続きが不要となり、より安定した生活基盤を築くことができます。
永住のデメリット
一方で、永住権にはいくつかのデメリットも存在します。
最も重要なのは、法的不安定性が残る点です。
日本国籍ではないため、状況によっては退去強制のリスクが完全にゼロになるわけではありません。
また、政治参加は不可であり、選挙権や被選挙権を持つことはできません。
これにより、日本の政治に直接参加する機会は得られません。
行政手続きの面では、手続きの継続が必要です。
在留期間更新手続きは不要になりますが、在留カードの更新など、定期的な手続きは依然として必要となります。
出国に関しては、出国制限があり、1年を超える海外滞在で永住権が取り消されるリスクがあります。
また、長期の出国を予定する場合には、事前に再入国許可を得る必要があります。
これを怠ると、日本に戻る際に永住権を失う可能性もあります。
永住の要件
1. 素行善良要件
- 素行が善良であること
- 日本の法律を遵守していること
2. 独立生計要件
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- 年収300万円以上が目安(扶養家族1人につき追加70万円)
3. 国益適合要件
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
具体的には
- 原則として引き続き10年以上日本に在留していること
- 就労資格または居住資格で引き続き5年以上在留していること
- 現在有している在留資格が最長の在留期間であること
- 出入国管理・難民認定法違反がないこと
帰化と永住の比較
帰 化 | 永住権 | |
申請先 | 住所地を管轄する法務局 | 住所地を管轄する入国管理局 |
日本での居住要件 | 原則、5年以上 | 原則、10年以上(就労・居住資格で5年以上) |
身元保証人 | 不 要 | 要 |
年金未払いのリカバリー | できる | できない |
許可後の国籍 | 日本国籍 | 外国籍 |
手数料 | 無 料 | 10,000円(2025年4月~) |
活動の制限 | な し | な し |
再入国許可 | 不 要 | 必 要 |
退去強制 | 対象外 | 対象となる |
外国人登録 | 不 要 | 必 要 |
日本のパスポート | 取 得 | 取得不可 |
参政権 | 有 | 無 |
被選挙権 | 有 | 無 |
まとめ
- ✔ 帰化と永住の一番の違いは、国籍が日本になるか否かということです。
- ✔ 帰化は自分だけでなく家族にも影響を及ぼすことがあります。
- ✔ 帰化は日本のパスポートを取得することができますので、海外渡航の際は有利になる場合があります。
みなとまち行政書士事務所の帰化申請サポートサービス
みなとまち行政書士事務所は、コンサルティングから書類作成はもちろん、依頼者に代わって法務局に出頭し書類の確認を受けるなど、最終の申請書の届出までサポートさせていただきます。
サービス内容
- 帰化申請に関するコンサルティング
- 法務局へ提出する書類の収集
- 法務局へ提出する書類の作成
- 申請時に法務局へ同行
- 結果受領に至るまでのサポート
費用
サポートの流れ
-
1.お問い合わせ
電話(06-4305-7395)や、お問合せフォーム(こちら)からお問い合わせください。
些細なことでもお気軽にお尋ねください。 -
2.面接 / 見積
ご依頼を検討いただける場合、更に細かくお話をお聞きさせていただくべく面談をさせていただきます。
また、費用やサポート内容についてもご説明させていただきます。 -
3.ご依頼の確定
サポート内容や費用等の条件にご納得いただければ、ご依頼を確定することを申し付けください。
着手金をお支払いいただきまして、正式なご依頼とさせていただきます。 -
4.書類の収集・作成
当事務所が取得できる書類は代行して手配いたします。
お客様で準備、作成していただく必要がある書類はご協力をしていただきます。 -
5.法務局での確認
申請までに2〜3回程度、法務局で書類の確認を受けます。
行政書士が代わって出頭いたします。 -
6.法務局で申請
お客様に法務局まで出頭していただき、申請の受付を行います。
(申請には申請者本人が出向く必要があります。)
また、申請のタイミングで残りの費用をお支払いいただきます。 -
7.面接の連絡
申請から2~3ヵ月後に、法務局から面接日時調整の連絡があります。
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8.面接
予約した日時に法務局に出頭していただき、面接を受けていただきます。
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9.審査
審査には通常9カ月から1年半程度かかります。
この間に事情の変化(転勤や住所の変更など)があれば法務局に連絡してください。 -
10.法務局から連絡
法務局担当官から連絡があり、許可・不許可の結果が通知されます。
この記事を書いた人
みなとまち行政書士事務所の可児(かに)と申します。
旅行が好きで、ふらっと出かけることもあります。昔は家族でよく出かけていましたが、最近は妻も娘も相手にしてくれなくなったので、一人旅を楽しんでおります。サービスエリアで1人ソフトクリームを食べているおじさんを見たら、たぶんそれはワタシです。